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優しさが、人の心を刻む。21歳、ニュージーランドでの思い出。


おかげさまで先日、無事に21歳になったのだけど、僕はまだ少しだけ20歳を引きずっているようにも思える。

「ちょっと待ってくれ、まだやることが残っているんだ」と、心が小さく叫んでいる。20歳のうちにやっておきたかったことは、まだいくつか手を付けないままに残されていた。この感じは、まるで夏休みの宿題をやり残したまま新学期を迎えた小学生の気分だ。

個人的な要望としては、自分が21歳になるのはもう少し先でもよかったんじゃないかと思う(そんなこと言っても仕方ないけれど)。

20歳というのは他の人に言いやすい言葉だったし、「若さ」の象徴的な表現になるから、それがたった1年で終わってしまうのはちょっと、もったいない。 生涯に1度だけ、1年分の年齢を飛ばせる制度があればいいのに、と僕は思う。たとえば20歳を2年間やったあと、22歳になるのだ。選べるとしたら、皆さんは何歳を選びますか?

でも時間は平等に過ぎていくし、大抵の場合、締め切り前というのはバタバタしているものだ。自分の誕生日をある種の「締め切り」だと思ってしまう僕は、もしかしたらちょっと可哀想な人間かもしれない。あれこれをやりたい、こういう自分になりたいとノートに書き殴って、引き出しにしまわれて、忘れられた頃にめくり返すんだ。その繰り返し。もう少し自由に年をとれたらいいのに。

でも、この1年間はきっと日本人の誰にとっても予想外の連続だったと思う。僕は震災が起きたあとに本を出版して、会社を作ったことで信じられないほど多くの人と出会いがあった。やり残したこともあったけど、予想もせず、できたこともまた多かった。あの日以降、自分自身の精神的な土台の再構築が始まり、内面が緩やかに組み替えられているような気がしている。この1年間は「本当に大切なものは何だろう?」という自問自答を繰り返していた。

とにかく、お祝いや励ましのメッセージを頂いた皆さん、本当に、ありがとうございました。

今年の誕生日の前夜には、僕がお世話になっている人や、大好きな友人を25名くらい招いて六本木のお店を2軒周って飲んでまわり、リア充な感じで、スパークリング・ワインが10本以上もあけられていきました(ありがとうございます)。

誕生日とバレンタインデーが近いので、チョコレートもたくさん頂いた。いつも祝う側だから、祝われるのはいまだに慣れなくて、ぎこちない。ロマンチックさの欠片も何もない日比谷線の終電の中でいつの間にか日付が変わり、僕はこの世界で21年目の呼吸を始めた。

日付が変わった瞬間、自分でも説明がつきにくい妙な感覚を覚えた。「自分の誕生日というものが、自分が生きている間にやってくるなんて、なんともおかしい話だ」と、いう。誕生日という一般的な意味からすれば矛盾しているが、その瞬間、僕は誕生日が毎年繰り返してやってくるんだという一般論が、どうしても腑に落ちなかった。あるいは、まるで自分の誕生日とは思えなかった。カレンダーや暦というのは、結局のところ人間が体系的に編み出した方法論であり、都合のいい解釈に過ぎないのだろう。人生は本当はずっと続く一本の糸みたいなもので、繰り返したり、年を重ねるということは、実はそもそも見当違いなのかもしれない。生まれてから地球が太陽を何周したかで人生を計るんじゃなくて、大事なのは、今ここに自分がいるということだ。その仮説が、僕の違和感を少しだけ解消してくれた。もちろん、本当のことは分からない。

僕は20歳の最後の3週間を、ニュージーランドと京都で過ごしたけど、この日々は僕の人生にとって忘れられない貴重なものになった。NZの記事は、時間があるときに、少しずつ書いていこうと思う。振り返って文章を書く作業が、好きだから。


 ニュージーランド北島のとある湖。満月の日、波はとても穏やかだった。

昨夜は、本田直之さん四角大輔さん安藤美冬さん村上萌さんジョンキムさん

栗城史多さん (美味しいチョコレートありがとうございました)、

編集者の桜井さんと、ニュージーランド・ワイン(これがまた美味しかった、本田直之さんありがとう)を開けながら、大切な夜を過ごしていたのだけど、そのときに四角さんと話していたエピソードを、最後に紹介したい。

俺らがニュージーランドの湖畔生活を始めて、初めて目の前の湖をボートに乗っていったときの話なんやねんけど。行くときは波が穏やかだったのが、帰りに思いのほか波が高くなって、揺れまくって、自分たちの力だけでは桟橋につけるのが困難になったんね。すると、隣に住んでいるデイビットが、とことこやってきて(彼自身もテンパりながらも)ボートを桟橋につけるのを、手伝ってくれたんよ。これやばいなぁ、絶対怒られてまうやろ、って思った。この土地にきたばかりの俺らが、大荒れの日にボート出してしまって、天気予報を見ておけとか、怒られるのを覚悟しとったんよ。日本だと、エントリーしてくる人間に対して厳しくする風潮があるやろ? でも彼は、真っ先に、超笑顔で『初出港、どやった!?』って肩を叩いてきて。『じゃあな!今度から気ぃつけてな』って言ってさっさと帰っていった。みんな、拍子抜けしてしまったんね。ああ、この国の人たちは、そうなんやなぁって。それ以来、絶対もう迷惑かけんようにしよ、って心に誓った。あのときのことは忘れられんな。

僕も最近、似たような経験があった。ヘマをしてしまって、ある投資家の方に、怒られるのかと覚悟していたけど、彼らは、僕を優しく諭してくれた。

僕は近い将来、本当に恩返しをしなくちゃ、と心に誓った。

四角さんは僕と過ごした2週間の中で、「ニュージーランドで生活を始めて、大自然からインスピレーションを受けつもりでおったけど、それ以上に現地の人から多くのインスピレーションをもらっていた。」と話されていた。

叱責や上から目線のアドバイスも、人を動かすかもしれない。でも、優しさは人の心に刻まれる。
それは人間性の一部に吸収されていって、ある人にとっては不動の信念になる。
掛ける声ひとつで、人の人生は変わってゆく。

僕がもし年をとっていくなら、そういう声を掛けられる大人になりたい。
優しくなりたい。

21歳の誕生日に寄せて 2012.02.16


1 Comment

  1. いきなりのコメントすみません(>_<)

    まったく同じ名前の人を見つけて感動したので
    書き込みさせていただきました。

    プロフィールなのどを読んだんですが
    すごい経歴ですね!
    なんか同じ名前でもしわけないです(T-T)

    これからもがんばってください(^-^)

    鶴田 浩之よりw

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